名選手が名将になった!デシャン監督の負けにくいチームのつくり方

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

サッカー名将列伝
第13回 ディディエ・デシャン

革新的な戦術や魅力的なサッカー、無類の勝負強さで、見る者を熱くさせてきた、サッカー界の名将の仕事を紹介する。今回は、選手としても(1998年)監督としても(2018年)ワールドカップを制した、フランスのディディエ・デシャン。98年にも18年にも共通する、フランス代表の特徴的なチームづくりに迫る。

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<生まれつきのリーダー>

 ユベントスの新監督にアンドレア・ピルロが就任した。スタープレーヤーがいきなり監督に就任しても、うまくいかないことが多い。ピルロは育成チームを担当する予定だったのが、急遽トップチームを任されることになった。おそらくクラブ経営も含め、競技面以外の理由からだろう。

2018年ロシアW杯を制した時のフランス代表デシャン監督2018年ロシアW杯を制した時のフランス代表デシャン監督 名選手が名監督になるとはかぎらない。名監督の多くは、むしろ無名の選手だ。偉大な監督のリストに必ず名を連ねるリヌス・ミケルス(オランダ代表監督など)、アレックス・ファーガソン(マンチェスター・ユナイテッド監督など)、エレニオ・エレーラ(インテル監督など)らは名選手ではなかった。

 近年でもユルゲン・クロップ(現リバプール監督)、ジョゼ・モウリーニョ(現トッテナム監督)などはスタープレーヤーではなかったし、アリゴ・サッキ(ミラン監督など)もそうだった。

「優れた騎手になる前に、優れた競走馬である必要はない」

 サッキはそう言っていたものだ。一方、ヨハン・クライフ(バルセロナ監督など)、ジョゼップ・グアルディオラ(現マンチェスター・シティ監督)、ジネディーヌ・ジダン(現レアル・マドリード監督)のように、スーパースターが監督としても成功する例もある。

 ディディエ・デシャンはスーパースターではなかったが、その実績からいって名選手だったことは間違いない。フランス代表のキャプテンとして1998年フランスW杯優勝、マルセイユではチャンピオンズリーグ(CL)優勝、ユベントスでもCL優勝。フランス代表とマルセイユの時は初優勝だった。

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