2020.09.03

バイエルンにあってパリにはないもの。福田正博が感じたクラブ哲学

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by AFLO

福田正博 フットボール原論

■2019-20シーズンの欧州サッカーは、バイエルンのチャンピオンズリーグ優勝で幕を閉じた。揺るぎない強さを示した王者と、あと一歩及ばなかったパリ・サンジェルマン、そしてショッキングな大敗で大会を去ったバルセロナとの差はどこにあったのか。福田正博氏に解説してもらった。

 2019-20シーズンのクライマックスになったチャンピオンズリーグ(CL)決勝は、バイエルンがパリ・サンジェルマン(PSG)を下して、7年ぶり6度目の優勝を果たした。

バイエルンのCL優勝は、ミュラーら経験ある選手たちが力を存分に発揮した点にある ビッグイヤーを獲得して三冠を達成したバイエルンだが、シーズン当初から圧倒的な戦いをしていたわけではなかった。

 リーグ戦の第9節までの戦績は5勝3分1敗で、リーグ4位。第10節でフランクフルトに1-5の大敗を喫したことでニコ・コバチ監督を更迭し、ハンス=ディーター・フリックを新指揮官に迎えた。

 この早いタイミングでの判断が奏功してV字回復を遂げたわけだが、フリック監督の手腕でもっともすばらしかったと感じるのが、一流選手たちをその気にさせるマネジメント術だ。

 監督の仕事というと戦術や布陣、選手起用に目が行きがちだ。しかし、世界のトップ・オブ・トップの超一流選手が集まるチームともなれば、監督にもっとも求められる能力は、エゴの塊のような選手たちをまとめていくこと。

 そのための手段のひとつとして戦術や布陣などが用いられるのであって、大事なのは感情のある人間がサッカーをやっているのを理解しているかだ。そして、この点をフリック監督はよくわかっていると感じるのだ。

 それはコバチ体制とフリック体制で、バイエルンのメンバーが大きく変わってはいない点からも読み取れる。選手層も戦い方もほぼ変わらないなかで、前体制下では本来の力を発揮できず、チームの不協和音になっていた経験のある選手たちのパフォーマンスを、フリック監督は大きく向上させた。