レアル、CL大一番を前に不気味な落ち着き。逆転のカギを握るジダン (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AFLO

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 一方で、ロドリゴやマルコス・アセンシオらを適切なタイミングで抜擢し、慧眼ぶりも証明。健全な競争を促し、選手たちからの求心力を自然と高めた。

「2019年3月に(ジダンととともにレアル・マドリードに)戻ってきたが、思った以上に難しい状況だった」

 ジダンの副官と言えるアシスタントコーチを務めるダビド・ベットーニは言う。単純に主力は高齢化し、クリスティアーノ・ロナウドの抜けた穴も大きかった。

「成功の要因は、ジズー(ジダンの愛称)が選手との関係を良好にできることが大きいだろう。メソッドがあるわけではない。自然な人間性によるものだろうが、選手の力を引き出すことができる。ジズーは自分の感情を完璧にコントロールできるんだよ。リスペクトし、リスペクトされるという関係性を生み出せるんだ」

 ジダンは選手たちを信頼し、その力を引き出した。その点、シティ戦でキーマンになりそうなのは、"リーグ戦MVP"カリム・ベンゼマだろう。

「技術的には優れているが、レアル・マドリードにふさわしいゴールゲッターではない」

 2017-18シーズンは、リーガ5得点に終わったこともあって、ベンゼマに対しては批判が渦巻いた。だが、ジダンは当時から外野の声を意に介さなかった。そのプレーセンスを一貫して高く評価。ロドリゴが言うように、厚い信頼を与えてきたのだ

 クリスティアーノ・ロナウドが抜けたチームで、ベンゼマはストライカーとしても仕事をするようになった。ロナウドがいた時は黒子に徹し、アシスト役に徹してゴール数は限られていた。しかし今シーズンは、前線のプレーメーカーとしてだけではなく、21ゴールを量産。リオネル・メッシと最後まで得点王を争い、優勝に貢献したのだ。

「レアル・マドリードは最高のチームさ。ジダンが信用してくれることで、最高の選手たちが力を出し切れるんだ」

 ベンゼマは言う。その理屈だと、戦いの趨勢を決するのは、ひとりの選手ではなく指揮官ジダンとも言える。

――レアル・マドリードの"スペシャルワン"(特別な人)だと感じますか?

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