「優柔不断」が決め手。フランス代表をW杯優勝に導いた名将の手法 (3ページ目)
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カントナのいないチームで攻撃の中心になったのは、ジネディーヌ・ジダンとユーリ・ジョルカエフだが、このふたりを同時に起用することも少なかった。ベストメンバーがどれで、システムがどうなるのか、まるで見当がつかなかった。
とどめはワールドカップメンバー22人を発表する日に、28人を発表したことだ。まだ登録期限前だったとはいえ、メディアと国民に告知する記者会見で6人も多い選手を発表して、「優柔不断」という印象は決定的になっている。
ただ、まったく一定しないメンバーとシステムで試合を重ねても、フランスはほとんど負けていない。「親善試合の世界チャンピオン」と皮肉られもしていたが、ブラジル、ドイツ、イタリア、オランダといった強豪相手に負けなかったのは事実である。
また、4バックをリリアン・テュラム、ブラン、デサイー、ビセンテ・リザラズで組んだ試合は不敗で、2年後の00年ヨーロッパ選手権までそれはつづき、ついに1敗もしないままだった。
強固な守備を基盤としたチームづくりは、結果的に大成功だったと言える。また、「優柔不断」の批判も実は当てはまらない。「ジャケは信念がない」とも言われたが、それは完全な誤解だろう。言わば、「決めない」という信念を貫き通したからだ。決めなかったのは確かだが、決断力がないというより「決めないことに決めていた」のだ。
<実験を繰り返す手法>
ジャケ以前のフランスはテクニカルで攻撃的だった。それがフランスらしさだと思われていた。脆さも内包していたが、それもまた「らしさ」と考えられていた。
ジャケ監督は従来の「フランスらしさ」に価値を置かず、新たなフランスらしさを手に入れている。移民系選手のフィジカルの強さを前面に押し出し、強固な守備をベースにしたプレースタイルに変換した。
強化方針もその後に影響を与えている。メンバーを固定せず、実験を繰り返す手法だ。メンバーを固定化して連係を深化させる従来の方針を採っていない。1回試せば、それで終わり。よくても悪くても繰り返さない。
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