2020.07.11

リキ・プッチはバルサの希望。
歴代の名手が持つ決定的能力を備える

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

サッカースターの技術・戦術解剖
第16回 リキ・プッチ

<トップ下のポジション>

 第33節アトレティコ・マドリード戦で先発、つづく第34節ビジャレアル戦では交代出場。バルセロナのリキ・プッチがプレーしたのは、4-3-1-2のトップ下だった。今ではほとんど見られなくなったポジションである。

バルセロナで出場機会が増えてきたリキ・プッチ 身長169cm、しかも細身。170cm以下の小柄な名手は数多くいるとはいえ、ここまで華奢な選手もまた珍しい。

 だが、だからこそプッチはバルセロナの希望なのだ。

 4-3-1-2がプッチのためのシステムなのか、それともやはりビジャレアル戦のように、リオネル・メッシ、ルイス・スアレス、アントワーヌ・グリーズマンを機能させるためのアイデアなのかは判然としない。あるいは、たんなるオプションにすぎない可能性もある。

 ただ、来季の去就が微妙になっていると報道されている、キケ・セティエン監督がその最中に打ち出した一手には、それなりの意味があると考えるべきだろう。

 相手のDFとMFの間のわずかなスペース。ここでプレーできるのは、メッシとプッチしかいない。狭いスペースでパスを受け、コンマ数秒で飛んでくる相手の足をかわしながらのプレーには、特別な敏捷性と精緻なボールタッチだけでなく、何よりも「速く考える」能力が問われる。

 それは「考える」というより反射に近く、このジャンルのスペシャリストを養成してきたバルサでも、高いレベルで実行できるのは現在ふたりしかいないのだ。

 もう忘れられかけていた4-3-1-2の「1」をあえて引っ張り出してきたのは、メッシとプッチを活用したいという以外に理由が見当たらない。メッシは右ウイングでもセンターフォワード(CF)でもプレーできるが、プッチはトップ下かせいぜいインテリオール(インサイドMF)だ。つまり、メッシとプッチのためのポジションであり、むしろプッチのためにつくったポジションの感すらある。