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スポーツが消えた今、欠けているもの。
W杯期間中に自殺が減る理由 (2ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 スポーツ経済学者のステファン・シマンスキーと僕は共著『サッカーノミクス』(邦訳『「ジャパン」はなぜ負けるのか』)の中で、ヨーロッパのフットボールに同様の傾向があることを示した。ほとんどの国で、代表チームがワールドカップや欧州選手権を戦っている期間には、自殺者が明らかに減っている。

 宗教からパブでの集いまで、コミュニティーの習慣のほとんどすべてが、数十年前から下火になっていた。新型コロナウイルスは、それらの習慣をほぼ根絶やしにしようとしている。

 だから、世界中でコミュニティーがひとつになるための新しい儀式がすぐに生まれたのは、不思議なことではない。それは、医療に携わる人たちをたたえる拍手だ。たぶん僕らは、医療従事者のためだけではなく、むしろ自分たちのためにこれをやっている。

 こんな時期にも、スポーツに対する奇妙なまでのこだわりを捨てられない人たちがいる。ロンドンの精神分析医クリス・オークリーのもとに、地球上のほぼすべての国でフットボールを観戦したことがある人物から写真が送られてきた。

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