史上最多のバロンドール6回受賞。メッシのベストシーズンとは? (5ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • photo by ben radford/Corbis via Getty Images

 この試合は、幸いにして現地で見ることができた。頂上決戦にふさわしい顔合わせであることに加え、19年ぶりとなるウェンブリーでのCL決勝ということもあり、気分を高揚させながら記者席に着いたのを思い出す。

 だからこそ、マンチェスターUが手も足も出なかった、バルサの強さに驚いた。スゴい試合を見てしまった。そんな得も言われぬ充足感とともに、帰路に就いたことを覚えている。

 その2シーズン前、ジョゼップ・"ペップ"・グアルディオラ監督就任1年目にして、いきなりCLを制したバルサは、新たな"実験"を繰り返しながら、このシーズンで理想のサッカーにたどり着いた感があった。もちろん、翌2011-12シーズンもペップの実験は続き、バルサはさらに強く、面白くなっていったとも言えるのだが、結果としてリーガでもCLでも優勝は逃している。つまり、ひとつの完成形を見たという意味では、このCL決勝こそが最高傑作だったのではないかと思うのだ。

 優れたテクニックを操るタレント。彼らが築き上げる流麗なパスワーク。そして、それを最大限に引き出すための有効なシステム。当時のバルサは、そのどれもがすばらしかったが、どんなにチャンスメイクできたとしても、最後の最後を締めくくる選手がいなければ、サッカーが点を取り合う競技である以上、最強チームは成立しない。

「史上最強」との呼び声まである2010-11シーズンのバルサ。当然、それはチームとしての評価ではあるが、最強を最強とたらしめたのは、メッシという才能があればこそ、だった。言い方を変えれば、その役目はメッシでなければ務まらなかった。

5 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る