攻撃的サッカーの聖地で行なわれた98年CL決勝は、関ケ原の戦いだった (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

 アヤックスはさっそく、ビッグクラブの草刈場と化していた。ヌワンコ・カヌ、フィニディ・ジョージ、ミハエル・ライツィハー、エドガー・ダービッツらの名前は、このグラスホッパー戦のスタメンには存在しなかった。

 結局このシーズン、アヤックスはCLでベスト4まで進んだ。一流だったチームが、メンバー的にそうでなくなってもなお、必死に勝ち上がろうとする姿に感激する一方で、無情さも覚えた。ボスマン判決を語る時、アヤックスは最もわかりやすい事例になる。前シーズン決勝戦を戦ったユベントスに、合計スコア2-6で敗れた準決勝は、それを象徴する試合で、一時代の終わりを告げるかのような哀愁が漂う幕切れだった。

 そのサッカーは画期的だった。CL史において最も印象に残るチームはと問われれば、当時のアヤックスを挙げるだろう。一方、アレナもスタジアム史に照らすと画期的な存在となる。画期的なサッカーを画期的なスタジアムで見たかった。グラスホッパーとの一戦を眺めながら、タイミングのズレを恨めしく思ったものだ。アヤックスの栄光は、新スタジアムの完成を待たずに終了。巡り合わせの悪さを感じる。

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