2019.11.28

ドリブルの花形「シザーズ」。
実はJFA会長も名手のひとりだった

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

スポルティーバ・新旧サッカースター列伝 第13回

ドリブルはサッカーのプレーのなかの一つだが、そのドリブルのすばらしさでファンを熱狂させ、喜ばせてきたスターがいる。自分の得意の型で相手DFを抜きまくった、名ドリブラーたちを紹介していく「ドリブル王選手権」。3回目は、フェイントといえばこれ、の「シザーズ」の使い手たちが登場する。

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<シザーズ王選手権(外→内またぎ)>

 シザーズはハサミのこと。サッカーのフェイントのシザーズは、足を外側から内側へ動かしてボールをまたぐものと、逆に内側から外側へまたぐものがある。近年は内→外のシザーズがほとんどだが、1970年代ごろまでは、ボールをまたぐフェイントといえば外→内のほうを指すことが多かった。

シザーズを混ぜた絶妙のドリブルが魅力だったルイス・フィーゴ 外→内またぎのシザーズといえば一択。ロベルト・リベリーノしか思い浮かばない。ブラジル代表として1970年メキシコ大会、74年西ドイツ大会、78年アルゼンチン大会の3度のワールドカップ(W杯)で活躍した名プレーヤーだ。

 ほかにもこのフェイントを使う選手はいたが、リベリーノほど効果的な選手は当時も今も見たことがない。テレビで見ても引っかかるような印象だった。左足のインサイドでボールを抱え込むような動作からボールをまたぎ、直後、素早く左足アウトで左へボールを持ちだしていく。リベリーノのシザーズはほかの選手とはキレが段違いだった。もう比較の対象がないぐらいである。唯一、比べるとすれば田嶋幸三を挙げたい。

 現在の日本サッカー協会の田嶋会長だ。若いファンには彼が選手だったことを知らない人もいるかもしれない。浦和南高校のキャプテンとして全国高校サッカー選手権で優勝、筑波大学を経て古河電工サッカー部という当時のエリートコースを歩んでいる。

 早々にコーチの道を歩んでいて、全盛期は高校から大学の時期だった。田嶋はリベリーノ式のシザーズの名手で、中学校時代に混雑する休み時間のサッカーで身につけた技だったそうだ。

 リベリーノ方式のシザーズは、とにかくキレが命。リベリーノはボールが右足の前にあるときに使っていた印象がある。右足の前にあるボールを左足のインサイドで触ると見せて、鋭くボールの前方を通過させてまたぐ。