ジダンを悩ますレアルのリアルな実情。守備崩壊で選手も固定できない

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AFLO

「PEGADA」(パンチ、打撃)

 レアル・マドリードの勝利の哲学をひと言で表すなら、そうなるだろうか。相手をノックアウトする一撃。つまり、得点力だ。

 PEGADAがチームの攻守を回す。ゴールゲッターたちが与える脅威によって、敵を怯ませ、退かせる。そして味方を勇気づけ、奮い立たせる。そんなロジックだ。

 それ故、レアル・マドリードが頂点に立った時には、必ずと言っていいほど偉大なゴールゲッターがいた。

 1950年代から60年代にかけて、欧州5連覇、リーガ・エスパニョーラ5連覇を成し遂げた時には、アルフレッド・ディ・ステファノ、フェレンツ・プスカシュという2人がゴールを量産。それぞれ5度、4度とリーガの得点王に輝いている。80年代、リーガ5連覇を果たした際は、ウーゴ・サンチェスが4度、得点王を獲得した。90年代末から2000年代にかけてラウル・ゴンサレスが活躍した時も、クラブは欧州、スペインの頂点に何度も立っている。そして、一昨シーズンまで欧州3連覇したチームでは、クリスティアーノ・ロナウドが6シーズン連続でチャンピオンズリーグ得点王を手にしていた。

 しかし、そのロナウドはすでに去った。昨シーズン、深刻な低迷に喘いだレアル・マドリードは復権できるのか――。

プレシーズンマッチで久保建英に話しかけるジネディーヌ・ジダン監督プレシーズンマッチで久保建英に話しかけるジネディーヌ・ジダン監督 7月の北米ツアーで、レアル・マドリードは「インターナショナルチャレンジカップ」に出場。バイエルンに1-3で敗れた後、アーセナルには2-2でPK戦の末に勝利するが、アトレティコ・マドリードには3-7で大敗した。常勝軍団としては惨憺たるありさまだった。

 7月30日、欧州に戻って参加した「アウディカップ」(ドイツ)でも、トッテナム・ホットスパーに0-1で完敗。スコア差は最小限だったが、GKケイロル・ナバスのスーパーセーブがなかったら、大差がついていただろう。チームとしての守備が機能せず、寄せは甘く、連動もなく、簡単にラインを破られた。失点シーンとなったマルセロの敵へのバックパスは、乱れの象徴だった。

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