サッカー日本代表が無理に招集した選手たち 三笘薫、伊藤洋輝はフル出場できる状態なのか
連載第84回
杉山茂樹の「看過できない」
「ピッチ上にいるか否かで0.3勝分は違う」と言っても言い過ぎではないほど、冨安健洋は日本の浮沈のカギを握る重要な選手である。ワールドカップの本番のピッチに必ずや立っていてほしい選手だ。それだけに取り扱いには細心の注意を払うべきである。故障から復帰したかと思えばまた故障。戦列からの離脱と復帰を繰り返してきた、無理は禁物のいわば"ガラスのエース"である。
今年1月、アヤックスの一員になった冨安は、交代出場で少しずつ試合に出るようになっていた。3月14日に行なわれたスパルタ戦では、久方ぶりにスタメン出場を飾った。すると森保一監督は、待ってましたとばかりにスコットランド戦(3月28日/現地時間。以下同)、イングランド戦(3月31日)に臨む日本代表メンバーに招集した。
まさに我慢できずといった感じで招集した森保監督に、筆者が反対の立場を取るのは当然だった。
森保監督には冨安に対して前科がある。たとえば2024年1月、カタールで行なわれたアジアカップだ。ケガから復帰したばかりの冨安を強引に招集。その結果、故障を再発させた。選手にケガはつきものとはいえ、この場合は起こるべくして起きた悲劇だった。監督の責任は重い。
冨安の力はわかっている。誰もが認める実力者だ。ワールドクラスといっても過言ではない。そんな復帰途上の一流選手に、負荷をかけるのは無謀というべき強化策だ。スコットランド戦、イングランド戦に無理して呼ぶ必要はない。本大会に向け、じっくり時間をかけて慎重にコンディションを整えさせるべき。本大会直前に招集すればそれで十分だと、メンバー発表直後の原稿に記した。
日本代表に招集されたものの、負傷のため辞退した冨安健洋 photo by Rex/AFLO
著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

