メッシ依存脱却へ。グリーズマンとデ・ヨングはバルサの新機軸になれる (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by AP/AFLO

 主に右サイドを務めるデンベレも、動きは滑らかになっているが、両雄と肩を並べるまでには至っていない。ネイマールの代役が務まりそうな選手、メッシ、スアレスと釣り合いが取れそうな選手は世の中にそういないのだ。それは将来、バロンドールに選ばれるかもしれない、いわば準バロンドール級の選手である。該当する候補選手はほんのわずかしかいないなかで、バルサは今季、アトレティコ・マドリードのエースアタッカーであるアントワーヌ・グリーズマンに白羽の矢を立てた。

 埼玉スタジアムで行なわれた楽天カップのチェルシー戦は、そのデビュー戦だった。

 メッシ、スアレス、アルトゥール、アルトゥーロ・ビダルといったコパ・アメリカ出場組はオフ。遠征に帯同しなかったので、バルサはグリーズマンを4-3-3の1トップで起用した。

 メッシ同様、グリーズマンも左利きだ。しかし、いかにも左利きという身のこなしではない。左右、そして真ん中とプレーエリアは広い。4-2-3-1なら前の4ポジション、4-3-3なら前の3ポジションに加えてインサイドハーフまでこなしてしまいそうな多機能性がある。

 メッシよりも今日的だ。監督にとってこれほど使い勝手のいい左利き選手も珍しい。そのうえうまい。メッシと遜色ない技術がある。アトレティコというクラブを支えてきた負けじ魂もある。

 対チェルシー戦。グリーズマンがバルサにとってベストな選択であることは、即座に判明した。中央の狭いエリアでリキ・プッチからリターンパスを受け、シュートに持ち込んだシーンがあったが、高級感漂うプレーとはこのことだ。利き足ではない右足でボールを止め、その足で左足シュートに持ち込んだわけだが、シャープでありながら粘っこいその一連の動きは、このチェルシー戦で最も光ったプレーでもあった。

「バルセロナのスタイルに慣れる必要がある」とは、エルネスト・バルベルデ監督の言葉だが、いまのバルサにとって、彼ほど適したアタッカーはいないと思う。どんなスタイルにもマッチしそうなところがこの選手の最大の魅力だ。バルベルデを名監督の座に押し上げることになるかもしれない"監督孝行"と言うべきだろう。

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