3度目のCL決勝。クロップは「シルバーコレクター」返上なるか?

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi
  • photo by Getty Images

 今度こそ、ユルゲン・クロップにトロフィーを掲げてもらいたい──。そう願っているフットボールファンは、世界中にたくさんいるだろう。

 感情表現が豊かで、軽妙な語り口と人好きのする笑顔を持つ51歳のドイツ人指揮官は、選手だけでなく、多くの人々を魅了する。昨シーズンのチャンピオンズリーグ決勝の会場では、イタリア国営放送のレポーターやアルゼンチンからやって来たベテランジャーナリスト、地元ウクライナの女性記者など、筆者と会話をした多くの人々が彼に好感を抱いていた。その後の1年間、日本でも多くのフットボール愛好家から、クロップに対する好印象を聞いた。

自身3度目となるCL決勝の舞台で初優勝を狙うリバプールのクロップ監督自身3度目となるCL決勝の舞台で初優勝を狙うリバプールのクロップ監督 そんな風に人気を博す指揮官が今週末、3度目のチャンピオンズリーグ決勝に挑む。2012-13シーズンはドルトムントを率いてバイエルンと戦い、2017-18シーズンはリバプールの監督としてレアル・マドリードと対戦。どちらも結果は敗北だった。

 またドルトムントでは2012-13シーズンから2年連続でブンデスリーガ2位、2013-14シーズンから2年連続でドイツ杯準優勝に終わっている。リバプールでの1年目の2014-15シーズンには、リーグカップとヨーロッパリーグで準優勝、今季はプレミアリーグで2位。実にこの7年間で、リーグ2位が3度、カップ戦準優勝にいたっては、2度のCL準優勝を含めて6回を数える。和製英語の「シルバーコレクター」と呼ばれても、不思議ではない。

「昨年のCL決勝後、キエフの空港で順番待ちをしている時、トラックスーツを着たうちの選手たちは皆、頭を下げて打ちひしがれていた」とクロップ監督は決勝を控えた今週、記者会見で語っている。

「そこにはさまざまな感情があったけれど、我々はプランを立てた。(CL決勝に)戻ってくる、と」

 そして見事に計画を遂行した。オフにGKアリソン・ベッカーら複数の即戦力を獲得し、どこにも引けを取らない陣容を完成させると、パリ・サンジェルマンやナポリと同居する厳しいグループを最終節に突破。決勝トーナメントではバイエルンとポルトを下したあと、バルセロナとの準決勝では第1戦で3点を先行される窮地に立ちながら、第2戦で4-0の大勝を収めて劇的な逆転突破を果たした。

 サディオ・マネ、モハメド・サラー、ロベルト・フィルミーノの看板3トップはここまで4得点ずつを記録し、後者二人を欠いた準決勝第2戦ではCFの代役ディヴォック・オリギが先制点と決勝点を奪って主役に。中盤では日を追うごとに新戦力ファビーニョが存在感を増し、アンディ・ロバートソンとトレント・アレクサンダー=アーノルドは欧州屈指の両SBと評価されるほどに成長した。そんなチームを支えるのが、昨季途中に加入してすぐさまディフェンスリーダーとなったフィルジル・ファン・ダイクだ。この27歳のオランダ代表CBも、昨季決勝の悔しさを糧にすると『BBC』に語った。

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