2019.05.10

決勝は「匂いの消えた」イングランド勢
対決。連日のCL大逆転劇に思う

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

 チャンピオンズリーグ(CL)準決勝第2戦。リバプール対バルセロナ、アヤックス対トッテナム・ホットスパー(スパーズ)の2試合を見ての感想をひと言でまとめるならば、どちらの試合もメチャクチャおもしろかった――となる。

 サッカーの試合を見終えた後、つい口をついて出やすいのは、不満や批判だ。筆のほうも、何かひと言、言わずにはいられない時ほど走る。しかし、ほぼ100%満足させられた状態にあるいま、言葉はなかなか出てこない。

 映画館で名作に出会ったときなど、ひとりで余韻に浸っていたいことがあるが、いまはまさにそんな気分だ。しかも、これらは映画でもなければ、小説でもない。「事実は小説よりも奇なり」を地でいく、エンターテイメントの粋が凝縮された2試合。言い換えれば、サッカーの魅力の最大値を大幅に更新した2試合となる。サッカーという競技が世界で断トツのナンバーワンに君臨する理由は、この2試合に、濃密なまでに集約されていた。

 CLはもちろん、W杯を含めて、ここまで神がかり的というか、奇跡的な逆転劇が連続して発生したのは、サッカー史上初だと断言できる。喜怒哀楽の渦中にある当事者を除けば、世界はいま限りなく不思議な空気に包まれた状態にある。

アディショナルタイムのゴールでアヤックスを破り、初のCL決勝進出を決めたトッテナム・ホットスパー サッカーの魅力について、世界中のファンが再認識していることだろう。巷には、サッカーファンをやめられなくなった人が溢れているに違いない。偶然この試合を見た、サッカーファンではない人まで虜にしたはずのリバプール対バルサ戦であり、アヤックス対スパーズ戦だった。サッカーの普及、発展に大貢献した4チームすべてに拍手を送りたい。

 リバプールとスパーズ。決勝は、2007-08シーズンのマンチェスター・ユナイテッド対チェルシーに続く、イングランド勢同士の対決になった。

 しかし、スタンドのムードはともかく、それぞれのサッカーを見る限り、イングランド的な匂いはもはやない。2007-08シーズンのマンU、チェルシーにも同じことを感じたが、今回の2チームはそれ以上だ。チームがますます多国籍化し、CLの舞台で他国のクラブと相まみえている間に、境界を示すエッジが落ち、スタイルが無国籍化しているという印象だ。