悔しさの後に見せた充実感。長谷部誠はチェルシー戦を特別と感じた
最後のキッカーであるベルギー代表MFエデン・アザールがPKを成功させた瞬間、フランクフルトのヨーロッパリーグ準決勝敗退が決まった。
チェルシーの選手たちが歓喜の雄叫びを上げるなか、120分フル出場した長谷部誠は、両手をひざにつけてしばらく動けなかった。少し時間が経つと、今度は天を仰ぐ。その様子から、悔しさが伝わってきた。
PK戦の末に敗れて悔しさをにじませる長谷部誠 5月9日に行なわれたチェルシーとのヨーロッパリーグ準決勝・第2戦。ホームでの第1戦を1-1で引き分けていたフランクフルトは前半にゴールを許すも、後半に入って同点弾を挙げた。試合は1-1のまま90分で決着がつかず、延長戦に突入。それでも勝負は決まらず、チェルシーがPK戦を4-3で制した。
念願の決勝進出は叶わなかったが、強豪チェルシーを相手にフランクフルトは最後の最後まで大善戦を見せた。そのなかで大きな役割を果たしたのが、3-1-4-2の「1」の位置、中盤アンカーとして先発した長谷部だった。
今季、ブンデスリーガで長谷部が定位置にしているCB中央のポジションではなく、アンカーに入ったのは、193cmの長身を誇る「FWオリヴィエ・ジルー対策」が理由のひとつだった。代わりにCB中央に入ったのは、屈強なDFマルティン・ヒンターエッガー。長谷部は第1戦に続いてアンカーに入った。
CB中央として評価をいっそう高めている長谷部だが、従来のポジションである守備的MFとしても、存在感は際立っていた。
優れた危機察知力と、試合展開の先を読むインテリジェンス。そして、仲間を鼓舞しながら指示を出すリーダーシップ──。攻撃の柱が、この試合でも貴重な同点ゴールを挙げて欧州移籍市場で評価急上昇中の21歳FWルカ・ヨビッチなら、守備のコンダクターは間違いなく、35歳の長谷部だった。プレーもさることながら、監督と意見交換をし、味方に声をかける長谷部の振る舞いは、ドイツ人と見紛うほど堂々たるものだった。
とくに筆者が目を奪われたのが、長谷部の「危機察知力」と「状況判断力」だった。
最終ラインと4MFのちょうど中間の位置にポジションを取ると、長谷部は常に首を左右に振りながら周囲の状況を確認していた。
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