日本も導入のVARとの正しい付き合い方。決めるのは人間で機械ではない (2ページ目)
これら4つのケースのなかで、「はっきりとした、明白な間違い」、もしくは「見逃された重大な事象」があった場合のみ、VARは主審の判定を援助(アシスト)することができる。
要するに、上記4つに当てはまらないプレーと、当てはまるものの「明らかな間違い」か「重大な見逃し」とは言えないプレーに関しては、従来どおり、判定の最終決定者であるレフェリーのジャッジがそのまま採用される、ということになる。
これらVARの大原則だけをクローズアップしてみると、確かに大きな疑問が生じる余地はなさそうに聞こえるかもしれない。しかしながら、実際にVARが採用されている大会やリーグ戦において、VAR自体が議論の対象となるケースは意外と多い。
とりわけ見る側に疑問を生じさせているのが、レフェリーがピッチサイドに設置されたモニターを確認(オンフィールドレビュー)したうえで判定を下すケースと、モニターチェックをせずにVAR担当との無線マイクを使った会話だけで判定(VARオンリーレビュー)するケースがある、という点だ。
すなわち後者の場合、「最終決定者はレフェリーではなく、VARなのか?」という疑念が生じてくる。しかもラグビーと違い、審判団とVAR担当以外の人間がその会話を聞くことはできない。仮に「今のプレーは反則だったか?」(レフェリー)、「映像を見る限り反則だった」(VAR担当)という会話が両者間にあったとして、その後にレフェリーが自らの判定を覆す新たな判定をした場合、最終判定はVAR担当が行なったと言えるのではないか。
そもそもIFABがVARを正式導入した際、「いかなる場合でも、判定の最終決定者は従来どおりレフェリーである」という大原則があったはず。
そこで、その大前提を揺るがしかねないVARの運用に対する疑問を解決すべく、VARに関するメディア説明会に登壇したデービッド・エラリーIFABテクニカルダイレクターに直接聞いてみると、明確な回答をしてくれた。
「通常、レフェリーがリプレーを見ないで判定を下すケースは、オフサイドかどうか、ファールが発生した位置がペナルティエリア内だったのか外だったのか、ボールがタッチラインを出ていたかどうかなど、白黒はっきりとした事実に基づく判定をする時です。
たとえばオフサイドの判定を主審が下す際、これまでもアシスタントレフェリーがフラッグを上げることでレフェリーの判定をサポートしていました。つまりVARシステムにおいてもそれは同じで、映像によってレフェリーのジャッジをサポートしているのです。
逆に、レフェリーがリプレー映像を確認してから判定を下すケースは、ハンドかそうでないか、レッドカードに値するファールか否かなど、そのほとんどが主観に基づく判定を下さなければならない場合です。なぜなら判定の最終決定者はVARではなく、レフェリーだからです」
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