バルサ新プロジェクトの全貌を独占取材。「サッカーの未来」とは? (3ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 ビッグクラブはとくに未来思考だったわけではないが、だんだんと賢くなっている。とりわけ90年代前半にテレビ放映権料がフットボール界に流れ込みはじめてからは、プロフェッショナルになることへの見返りがどんどん大きくなっていった。バルセロナは2017-18会計年度に10億3900万ドル(約1200億円)の収益を上げ、スポーツチームでは初めて10億ドルの壁を越えた。

 トップクラスのクラブは、選手にかつてないほどの高給を払い、その見返りにかつてないほどの貢献を求める。90年代以前のフットボール選手たちは、ロックスターまがいの破天荒な生活をしていたが、そんな習慣はほとんど死に絶えた(まだ試合後のロッカールームでたばこに火をつけたり、街なかでちょっと飲んだりする選手がいないわけではないが)。

 バルサのイノベーション・ハブがフットボール界のトレンドの先駆けなのかどうかは、まったく知りようがない。ライバルのクラブが情報を明かさないからだ。「他のクラブは自分たちの知識を共有したがらない」と語るバルトメウは、どちらかといえば情報共有を支持している。

 ロンドン・スクール・エコノミクス(LSE)の経済学教授で、リーガ・エスパニョーラのアスレティック・ビルバオの理事でもあるイグナシオ・パラシオス・ウエルタは、少なくともフットボール界のデータ分析の領域では「確実に先頭を走っているクラブがある。リバプールだ」と言う。「数学や物理の博士号を持つ4、5人がチームをつくって活動している。おまけに彼らは、フットボールを知っている」

 けれどもパラシオス・ウエルタは、イノベーション・ハブのスタッフに自由にリサーチをさせている点でバルサを称賛する。しかもバルサのイノベーション(革新)は、リバプールより大胆なものかもしれない。

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