本田圭佑からもらった金言を胸に、
元川崎のDF井川は香港で奮闘する

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi
  • photo by Getty Images

 2001年にガンバ大坂ユースからトップチームに昇格し、期限付き移籍でチームを転々とした後、2006年から川崎フロンターレに12シーズン在籍した井川祐輔(2008年に完全移籍)。川崎では選手会長も務めたこともある36歳の井川は、昨年から香港プレミアリーグのイースタンSCでプレーしていた。

 ところがこの冬、シーズン途中にも関わらず、クラブから契約を途中で破棄されてしまった。契約条項に「50%のアピアランスレート(出場率)」というものがあり、それに達していなかったために解雇されたという。その条文には不透明なところもあったようで、香港プレミアリーグ屈指のキャリアを誇る守備者の解雇は、当地の主要紙にも報道された。「非情」という言葉を伴って。

 過去に、香港に6年間在住した筆者のもとに、当時の友人を通じて本人から連絡があったのは2月初旬のこと。その際には、つらい現状を語りながらも、「1年間住んで大好きになった香港でこれからもやっていきたい」と、前向きに話してくれた。

2017年まで川崎でプレーし、翌年から香港に活躍の場を求めた井川2017年まで川崎でプレーし、翌年から香港に活躍の場を求めた井川――まずは川崎を退団した後、香港を選んだ理由と経緯から聞かせてください。

「2013年に最初に来た時、すっかりこの街が好きになりました。活気があるし、英語も通じるし、いい人が多い。もともと『海外でサッカーをしたい』とも思っていたんですが、2017年のACLで川崎がイースタンのホームで試合をした時に、あらためて海外でプレーすることの楽しさを実感したんです。

 その年のシーズンが終わった後、川崎との契約が満了になり、クラブからは『残ってほしい』と言われたのですが、『海外でプレーしたい』と伝えました。いろいろなことがありましたけど、最終的にイースタンからオファーが届いたんです」

――具体的にはどんなことがあったのですか?

「最初は別のチームが誘ってくれたのですが、いざ契約交渉を進めると、『オーナーがFWをほしがっているから、今回の話はなかったことにしてくれ』と言われて。先に言ってほしかったですけど、まあ、アジアではよく聞く話です。

 ショックでしたが、当時相談していた人に『直接来ていろんな人と話したら、道が開けるかもしれないよ』と促されて実際にそうしたら、イースタンからのオファーが届いたんです。弾丸ツアーを2回も決行しましたけど(笑)、自発的に行動することの重要性を学びました。Jリーグ時代は、契約ごとはすべて代理人に任せていましたけど、このときはすべてひとりでやりました」

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