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森保Jに立ちはだかるイランの
ケイロス監督。「相手を泣かせろ」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Imaginechina/AFLO

 ケイロスは、エキセントリックな監督ではない。地道で勤勉で、日々のトレーニングの質を重視。丹念に守備組織を作り上げることによって、攻撃では選手の創造性を引き出す。いわゆる正統派の監督だ。

 監督としての個性が見えるのは、そのディテールだろう。たとえば、イランの監督に就任した時のことだ。過去の試合で、負けてベンチで泣き崩れるイランの選手たちのビデオをミーティングで流し、こう宣言した。

「私とともに戦うからには、君たちはイランのために泣いてはならない。君たちがやるべきことは、イランと対戦した選手たちを泣かせることである。今日からは涙を禁じる。必ずや、他国の選手を"悲劇の英雄"にしてやろうじゃないか!」

 ケイロスはそう言って、選手の士気を高めた。そのコミュニケーション能力は、監督としての武器のひとつだ。

 マンチェスター・ユナイテッドのコーチ時代、クリスティアーノ・ロナウド(ユベントス)を指導したときも、ケイロスは言葉でプレーに変化を与えている。

「スポルティング時代から、君のことは知っている。そこで、ひとつ決着をつけようじゃないか。君は世界一の選手になるために生まれてきたはずだ。私はそのサポートができる。しかし、君自身が対価を払う必要もあるだろう。すでに偉大な選手だが、世界一の選手になるのは別次元の話なのだ」

 ケイロスはそう言って、ロナウドがボールを持っていないときの動きを怠らないように強く戒めたという。ボールを持ったときの無双感は他を圧倒していたが、マークを外してエリア内に入るなど、ボールを持っていないときの動きは足りなかった。

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