アトレティコはCL優勝の可能性十分。シメオネ采配が巧みすぎる (3ページ目)
中山 小澤さんがおっしゃったように、全体として攻撃の部分での進化を感じます。たしかにラ・リーガでのバルセロナ戦は守備一辺倒になってしまいましたが、それ以外の試合では攻撃のバリエーションが確実に増えている印象を受けます。
今から3年前、フェレイラ・カラスコが加入した2015-16シーズンにも同じように攻撃の進化を見せ始めていたシーズンがありましたけど、当時は得点力が上がった一方で、守備が破たんしてしまって調子を落としたことがありました。その時シメオネはシーズン途中に原点回帰し、もう一度ディフェンスを構築し直してV字回復をしましたが、今シーズンは同じ轍を踏まないような気がします。ロドリやルマルといった新戦力が当たったことと、トーマス・パーテイが成長していることが、その要因になっていると思います。
小澤 今シーズンは、自陣にこもって守る時間帯は減っています。前からプレッシングをハメに行きますし、ボールを持ったらしっかりつなぐこともできます。やはりボランチの選手が足元でさばけるトーマスやロドリでハマったことが大きいと思いますね。それまではガビが長くプレーしていたのですが、彼がいた時はなかなか足元でつなぐことは難しいですし、ビルドアップ時にあまり関与できないという部分がありましたから。彼が昨シーズンから実質的にはベンチを温めるようになって退団の方向に傾いていたので、今シーズンになってそこがスッキリしたという部分はあると思います。
中山 たとえば4-0で大敗したドルトムント戦も、前半に不運な失点があって1-0で後半を迎えたアトレティコが、後半開始からロドリを投入して攻撃的に出たことがありました。結局、攻撃的に出たことによって後半に3失点してしまったわけですが、これまでのシメオネ采配からすれば、これはすごく大きな変化だと思うんです。
そんななか、次にホームにドルトムントを迎えた試合ではアトレティコらしい試合をしてきっちり2-0で勝利できた。そういった戦い方の切り替えもできるようになったことを考えると、3シーズン前の失敗が生かされているというか、シメオネの持つ引き出しも明らかに増えていると見ていいのではないでしょうか。つまりそれは、守備一辺倒で勝ち上がりながら優勝トロフィーを手にすることはできなかったアトレティコの限界値を超えられるかもしれないという、ある種のシグナルのような気もします。
小澤 監督がチャレンジしているので、選手もそこに乗っかっている感じはしますね。それに、前回話題になったバイエルンやマドリーと違って、アトレティコはルマル、ロドリ、サンティアゴ・アリアスなど新陳代謝が大胆にできています。そこまで絶対的な選手がいなかったという部分はあったにせよ、ビトーロもケガから復帰しましたし、ニコラ・カリニッチもフィットし始めていますし、選手層は確実に厚くなっていますよね。
倉敷 シメオネはやり繰り上手です。移籍で選手を失ってもどんなタイプの強敵にも戦えるチームを毎回作ってくる。しかし、チャンピオンズリーグの本命には推しにくい。シメオネがマンネリ化しないよう工夫してやり繰りしているし、コーチ陣と選手の経験値でベスト4あたりまでは危なげなく計算できます。でも、そこからのプラスアルファに欠ける。アントワーヌ・グリーズマンやジエゴ・コスタが最後まで絶好調のシーズンでなかったらチャンピオンズで勝つことはないのかなという気もします。
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