武藤嘉紀は苦境のチームに活気を与える。
「信頼を確信に変えたい」

  • 田嶋コウスケ●取材・文 text by Tajima Kosuke
  • photo by Getty Images

 9月15日に行なわれたプレミアリーグ第5節のニューカッスル・ユナイテッドvs.アーセナル戦で、ベンチスタートの武藤嘉紀に出番の声がかかったのは、0−2のアーセナルリードで迎えた79分のことだった。

アーセナル戦での武藤嘉紀は攻撃に活気を与えていたアーセナル戦での武藤嘉紀は攻撃に活気を与えていた 試合はニューカッスルの劣勢で進んでいた。第3節チェルシー戦(1−2)と第4節マンチェスター・シティ戦(1−2)で見せた超守備的な戦術こそ取らなかったが、ニューカッスルは試合の主導権を握れずにいた。49分に先制点を奪われると、チーム全体が見るからに意気消沈。選手たちの足は止まり、後方で守備ブロックを敷くだけで精一杯になった。実際、武藤投入時のスタッツは、アーセナルのシュート数10本に対し、ニューカッスルはわずか2本――。枠内シュートにいたっては、ニューカッスルは1本も打てずにいた。

 そんな苦しい状況のなか、武藤はピッチに入った。2トップの一角、あるいは4−1−4−1のインサイドMFとも取れる攻撃的なポジションに入ると、サイドまで幅広く動いて試合の流れを変えようと走り回った。

 そんな武藤の投入から、チームは活気づき始める。武藤が左サイドからカットインし、右サイドに大きくサイドチェンジすると、パスを受けたMFアジョセ・ペレスがクロスボールを入れる。CFホセルのヘディングシュートで初の枠内シュートを記録すると、その4分後にニューカッスルは1点を返した。

 しかし、猛追はここまでで、結局ニューカッスルは1−2の敗戦を喫した。プレミアリーグ第5節までの成績を4敗1分とし、またしても初勝利を挙げられなかった。試合後、武藤も悔しさを露わにし、憮然とした表情でピッチを引き上げていった。日本代表FWは、勝ち星のないチームの現状について次のように語った。

「自信なさそうにプレーしている。パスをつなげられず、前にドーンと蹴ってしまうとか......。本当にそれはもったいない。ボールを間(のスペース)で受けるのを怖がってしまい、縦一本になってしまう。前線にスーパーな選手がいれば、話は変わるかもしれないですけど、そういうチームじゃないので。全員で連動しながら戦っていかないといけない。前半は、それができていたと思うんですけど、後半に疲れてくると、走れなくなってしまう。

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