モドリッチが述懐。クロアチア快進撃の
きっかけとなった「監督の言葉」 (3ページ目)
W杯開幕の直前まで、クロアチア代表を取り巻く空気には不穏なものがあった。多くのサポーターは、汚職などで裁判沙汰になりながらも幹部に留まる者がいるクロアチアサッカー協会や、プライベートで問題を抱えるダボル・シューケル会長(1998年フランス大会の英雄である)に反対の声を上げていた。
ディナモ・ザグレブのオーナーで、クロアチアサッカー界のドンであるズドラブコ・マミッチは、脱税などで懲役6年の有罪判決を受けたにもかかわらず、ボスニア・ヘルツェゴビナに逃亡し、収監を免れている(彼はボスニアの国籍も持っている)。ルカ・モドリッチとデヤン・ロブレンも、かつてディナモの選手であったことから、この裁判沙汰に巻き込まれており、不安定な状況でW杯への日々を過ごしていた。
「マミッチと同罪だ」などというバッシングを受け、精神的にかなりのダメージを負い、一時はW杯出場さえも危ぶまれる状態だった。しかし、ダリッチ監督の力も借りて、モドリッチはその逆境を力に変えた。誰にも何も言わせないように、頂点を目指したのだ。
監督の必死の働きかけによって、チームのメンタル面は最高の状態となり、初戦のナイジェリアに勝利してからはどんどん成長していった。なにより気持ちを盛り上げたのは、アルゼンチンに3-0で勝利したことだ。リオネル・メッシを完全に封殺したことにより、選手たちはダリッチの言葉だけでなく、肌で自分たちの成長、自分たちの実力を実感し、そしてついには決勝までたどり着いた。
クロアチアにとってこの2位は、優勝に等しいものだ。選手たちが帰国すると、なんと55万人の人々が、彼らを迎えようとクロアチア中から首都ザグレブに集まった。クロアチアの人口は417万人だから、実に人口の15%以上の人が、選手たちを祝福しにやって来たことになる。
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