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W杯決勝直前。超速・フランスと好感度抜群・クロアチアの本質に迫る (3ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi photo by JMPA

 そんなフランスに対して、翌日にイングランドを下したクロアチアのサッカーは、どちらかといえばベルギーに近い。ここまでの勝ち上がり方も劇的な勝利が続き、好感度も抜群だ。ただ、2試合ともPK戦の勝利だったうえ、準決勝で対戦したイングランドの休養日が1日多かったこともあり、この試合はイングランド優勢と見られていた。

 そんな中、クロアチアのズラトコ・ダリッチ監督は、基本布陣の4-2-3-1ではなく、ロシア戦の途中から使った4-3-3でこの試合に挑んだ。ルカ・モドリッチとイヴァン・ラキティッチの看板ダブルボランチを一列上げて、3-1-4-2を敷くイングランドのアンカーポジションでプレーするジョーダン・ヘンダーソンの左右のスペースでプレーさせようという意図が見て取れた。

 しかし、前半開始早々に与えたフリーキックをキーラン・トリッピアーに直接決められたことと、疲労の影響から"らしくない"ミスパスやミストラップが目立ったこともあり、ダリッチ監督の狙いは奏功しなかった。

 一方、イングランドの選手の動きは元気そのもの。圧倒的な走力でプレッシャーをかけながら、ボールを奪ったら縦にキックして前線の選手を走らせる。中盤を制圧しようとしたクロアチアの狙いを外すかのように、中盤省略型のサッカーで前半を支配した。

 しかし、後半68分に潮目が変わる。ラキティッチの美しいサイドチェンジを右サイドバックのシメ・ブルサリコが受けると、ブルサリコが入れたクロスをイヴァン・ペリシッチがフィニッシュ。そこから試合はクロアチアペースに一転した。

 驚くべきは、クロアチアのスタミナだ。しかも「ピッチ上の選手は誰も途中で交代してくれなんて言わなかった」と試合後に振り返ったダリッチ監督は、後半終了の笛が鳴るまで交代カードを一枚も切らなかったのである。そして延長後半109分、マリオ・マンジュキッチが執念のゴールを決め、またしても劇的な逆転勝利を収めたのだった。

決勝進出を決めて喜ぶクロアチアの選手たち決勝進出を決めて喜ぶクロアチアの選手たち 誰が見ても、好感度がアップする勝ち方。今、世界中でクロアチアファンが急増しているに違いない。大会前にはアウトサイダーだったヨーロッパの小国は、小気味よい攻撃的サッカーを見せ、しかも3試合連続で120分を戦い抜いて決勝戦に勝ち上がったのだ。当事者以外の人であれば、心がクロアチアに傾くのも当然だ。

 これで、日程的にもアドバンテージのあるフランスは、勝って当然という視線を浴びながら決勝戦を戦うことになった。しかも、フランス人以外の多くの人は、クロアチア側に回って4年に1度のクライマックスに注目することだろう。

 見逃せないのはクロアチアの右サイド攻撃と、フランスの左サイドのディフェンスの攻防だ。デシャン監督が最後までブレずに、堅実采配を続けられるのかという点も見逃せない。守るものが何もないクロアチアは、間違いなく攻めてくる。それを、フランスが奥深きディフェンスでしっかり吸収すれば、もちろん勝機はフランスにあるだろう。

 世界が注目する4年に1度のファイナルは、現地時間7月15日18時(日本時間16日深夜0時)にキックオフする。

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