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セレソンは甘やかされていた。
チッチ監督は続投も、ネイマールは正念場 (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 しかし、グループリーグ初戦から、ブラジルの調子はよくなかった。スイス戦のプレーは最低で、どうにか引き分けに持ち込み、コスタリカとセルビアにはギリギリの勝利。決勝トーナメントに駒を進めることはできたが、ブラジルが強いチームでないことは明らかだった。

 そんな成り行きに一番ショックを受けたのは、選手たちだった。これまで「すばらしいチームだ」「絶対に勝てる」とさんざん周囲からおだてあげられ、自分たちは強いと信じ込んでいたのに、結果はそれを裏付けてはくれない。選手たちはパニックに陥り、焦りとプレッシャーから、次第に感情をコントロールできなくなっていった。

 それを象徴しているのが、コスタリカ戦の後のネイマールだ。どうにか勝利を手にすると、ネイマールはピッチに膝をつき、世界が注視するなかで、まるで子供のように泣いていた。

 決勝トーナメント1回戦のメキシコ戦では少しマシになったが、本当の強いチーム、強い選手とのガチンコ勝負になった途端、つまりベルギーと当たった途端、ブラジルは負けてしまった。

 ブラジルに足りなかったもの。それは現実を見据える力だったのではないか。

 この1年間無敗だったこと、なにより前回ブラジルW杯で大敗(1-7)したドイツに、親善試合とはいえ勝利(1-0)したことは、ブラジルに過信をもたらしてしまった。まさかドイツが、これほど弱体化していたとは思ってもいなかったのだ。

 真の強豪だった時代にはとうてい及ばないのに、蝶よ花よと持ち上げられ、自分たちが世界で一番強いと思い込んでしまった選手たちは、ライバルも決してサッカーを知らない素人ではないことを忘れてしまった。ネイマールという名前なら、絶対にファンタスティックなプレーができるはずだと信じ込んでいた。

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