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「ドイツに勝ったメキシコ」の戦術に
必要な天才アタッカー。日本には... (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 そのズレは、ピッチにおいては天才性として出現する。相手をあざ笑うように裏を取ることができる。圧倒的に技術センスで優れていることもあるが、テンポを少し変えることで優位に立てる。左利きで人と感性が違い、リズムも体の使い方も異なる。ディフェンスにとっては守りにくい相手だろう(基本的に左利きは少ないため、ディフェンダーは単純に対戦経験が乏しい)。ひらめきの点でも、意外性がある。

 ドイツ戦でトップ下として出場したベラは、抜群のキープ力でボールを収めている。相手を誘いつつ、ファウルをとってFKにする技術はしたたかだった。カウンターの起点としても、相手のタイミングを外すプレーが絶妙で、味方にアドバンテージを与えている。決勝点のシーンも、自陣での守備から速攻でボールを受けると、ハビエル・エルナンデスに前を向かせる気の利いたパスで、歓喜を呼び込んだ。

 ベラはあまり表情を変えない。子供がいたずらでもするように、相手の裏をかくプレーをやってのける。あるいは、ポーカーフェイスこそ、その真骨頂なのかもしれない。

「あいつはミスターリラックス。へそ曲がりというか、感覚が違うんだ。物事に動じないし、いわゆる天才なんだろうね」

 スペインでレアル・ソシエダを取材していたとき、チームメイトはベラについてそう語っていたものだ(現在はロサンゼルスFC/アメリカに所属)。

 そして、そのベラをも凌ぐ天才アタッカーとメキシコで言われているのが、22歳の新鋭イルビング・ロサーノである。

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