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リバプールはレアル相手に得意の
戦術「ストーミング」を決められるか (4ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 彼とは逆に、今はマンチェスター・ユナイテッドを率いるジョゼ・モウリーニョは、ストーミングのトレンドから取り残されているようにみえる。キャリアの大半を通して、モウリーニョはたいてい1-0で勝つことを目指してきた(例外はレアル・マドリードを率いていた2011~12シーズンで、この年にはシーズン得点数のリーグ記録をつくった)。

 守備的な戦術は安全に思えるが、逆にリスクが高いこともある。前線に多くの選手を送らなければ得点は生まれないだろうし、相手チームの数少ない攻撃でゴールを奪われる可能性もある(4月にマンチェスター・ユナイテッドがホームにウェスト・ブロムウィッチを迎えた試合を0-1で落としたのは、いい例だ)。

 プレミアリーグの今季の最終成績で、2位マンチェスター・ユナイテッドの失点は、優勝したマンチェスター・シティより1点多かっただけなのに、勝ち点では19点差をつけられた。この差を生んだのは得点数だ。総得点はシティが106点、ユナイテッドが68点。1シーズンは38試合だから、ちょうどシティが1試合平均で1点多く決めたことになる。

 守備の選手を引かせる理由を聞かれて、モウリーニョは現代の選手は体力を極限まで使うものではないと答えている。1月の時点で、ユナイテッドの選手が1試合当たりに走った距離はプレミアリーグで最も少なかった。

 だが、モウリーニョは今のトレンドに取り残されていることを、それほど気にしていないはずだ。究極の改革者には、そんな時期が必ずと言っていいほど訪れる。10年ほど前にはアーセン・ベンゲルが同じ経験をした。

 今はストーミング戦術の第一人者のようにみえるリバプールのユルゲン・クロップ監督も、やがて同じことになるかもしれない。

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