日本でいちばん「世界の超一流FWを
知る男」は、W杯ベスト8を狙う

  • 田嶋コウスケ●取材・文 text by Tajima Kosuke
  • photo by AFLO

 試合終了のホイッスルが鳴ると、サウサンプトンのサポーターがピッチになだれ込んだ。

 5月13日に行なわれたプレミアリーグ最終節のマンチェスター・シティ戦で、吉田麻也が所属するサウサンプトンは0-1で黒星を喫した。しかし、同時刻キックオフで行なわれた降格圏18位のスウォンジー・シティも、ストーク・シティに1-2で敗戦。残留圏17位のサウサンプトンと降格圏18位のスウォンジーとの勝ち点差は「3」のまま変わらず、サウサンプトンの来季残留が決まった。

吉田麻也は気持ちを切り替えてロシアW杯に臨む吉田麻也は気持ちを切り替えてロシアW杯に臨む そのため、試合を終えると笑顔のサポーターが次々とピッチに侵入してきた。吉田のもとにもファンが駆け寄り、肩を抱いたり、ハイタッチしたり、子どもが抱きついたりして健闘を称えた。

 試合後の吉田も喜びに浸っているだろうと筆者は想像を膨らませていたが、取材エリアに姿を見せた彼の表情は少しばかり違っていた。残留に安堵しながらも、まったく納得はしてない様子で複雑な表情を浮かべていた。

 ひとつ目の理由は、試合終了間際に失点し、試合を0-1で落としたこと。ふたつ目は、本来サウサンプトンは残留争いに巻き込まれるべきチームではないと吉田が考えていること。最後の理由は、昨シーズンにレギュラーの座を掴んだ吉田が今季を飛躍の年にしたいと期していたこと。

 シーズン後半戦はケガに見舞われ、約3ヵ月にわたり先発から遠ざかることもあった。さまざまな思いと考えが、吉田の表情を複雑なものにしていた。

 日本代表DFは、記者団の前で語り始めた。

「(記者:プレミア残留が決まった)。今季で評価できるのは、それだけですね。今日の試合が象徴していたように、ツメの甘さというか、最後の甘さがシーズン通して、尾を引いてしまったかなと思います。

 プレミアリーグのチャンピオンが相手だった。ということは、世界有数のクラブが相手になるので、どれくらい自分ができるのか試したかった。あとは、(マンチェスター・Cを)勝ち点100に乗せたくなかったので、最低でも引き分けで終わりたかった。

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