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チェルシー戦の注目はパウリーニョ。
バルサ「6番」の系譜とは何か (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Getty Images

 想定以上の活躍だが、実はバルサには伝統的に、パウリーニョのような選手に与えられる「背番号」があった――。

 バルサは多くの選手がパスによる連係を優先するなかで、それぞれのポジションを守るのが基本になっている。当然、ポジションは変えているのだが、それはひとつのオートマチズムによるもので、1人がこう動いたらもう1人がこう動く、という定石がある。そのおかげで円滑なパス回しが行なわれる。

 一方で、ゴール前のセカンドボールに対して詰めにいく姿勢は消極的にならざるを得ない。パスコースを作る立ち位置。それが優先されるからだ。

 しかし、パウリーニョはそこで果敢に前に出られる。ゴール前に詰められる。その結果、得点が決まっているのだ。「もう1人のストライカー」としての機能を果たしている。
 
 もっとも、先述のようにパウリーニョはもともとバルサにいたタイプだった。

 1988年にバルセロナの監督に就任したヨハン・クライフは当初、3-4-3を基本のシステムにしていた。中盤ダイヤモンド型のてっぺんのトップ下を、「6番」と定義。そこは前線のプレーメーカーで、ポストワーカーとしてボールを動かせるスキルだけでなく、インテンシティとダイナミズムを求めている。攻守両面にわたって、ボールを奪い、ゴールを奪える、その動きを活性化できる選手だ。

 クライフが作り上げたドリームチームで、初代の6番に指名されたのが、MFホセ・マリア・バケーロだった。

 バケーロはバスク人で、タフな肉体と精神を持っていた。チームのために守備をした後、カウンターを起動し、ゴール前まで進出する。長身ではなかったが、ジャンプ力に長け、ヘディングもすこぶる強かった。運動量も豊富で、ボールをもらうために質の高いランニングを見せ、こぼれ球に対する鼻もきいた。とりわけ、敵を背にしながらのフリックパスは芸術的だった。

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