メッシには従うが、カバーニは認めん。パリの新王様・ネイマールの野望 (3ページ目)

  • 沢田啓明●文 text by Sawada Hiroaki photo by Sano Miki

 また、クラブは「ネイマールか、カバーニか」の二者択一を迫られた場合、ネイマールを選ぶ公算が大きい。PSGは2013年7月に違約金6400万ユーロ(約85億円)を払ってカバーニを獲得したが、ネイマール獲得にはその約3.5倍の2億2200万ユーロ(約295億円)を費やした。そして、このような状況を理解したカバーニが、不本意ながらPKキッカーをネイマールに譲ることに同意した可能性は十分にある。

 とはいえ、バルセロナ在籍中の4年間、リオネル・メッシに従順に仕えて何の問題もなかったネイマールが、なぜ移籍早々、カバーニといきなりこんな騒動を起こしたのか。

 ネイマールは、ブラジルのどこにでもいる陽気で茶目っ気のある若者だが、プライドは非常に高い。バルセロナは子供の頃からの憧れのクラブで、「是が非でも入りたい」と思っていた。また、入団当時、メッシははるかに格上の選手であり、しかもクラブの生え抜き。彼と共存しなければクラブに居場所がないことを理解していた。メッシが王様であることを認め、彼のためにプレーするしか選択肢がなかった。

 しかし同時に、「この状況に甘んじている限り、世界最高の選手にはなれない」とも考えていたに違いない。PSGから「君を中心にしたチームを作る」と口説かれると、金銭面のメリットも考慮して移籍した。カバーニも非常に優れた選手だが、ネイマールに「自分より格上の選手」という認識はない。王様になるつもりでパリへ来たら、顔の長いウルグアイ人がFKもPKも全部蹴ろうとする。「話が違う」と思ったはずだ。

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