2部で5位からプレミアへ。ハダースフィールドの夢を支える無名選手 (2ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper  森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 会社を売却する前から、ホイルはすでにクラブを動かす立場にあった。「試合は見に行っていた。(2007~08年シーズンに)クラブはアンディ・リッチーという監督のもとでプレーしていた。あのころはたぶん──こんなことは口にしたこともないが──クラブを見に行くのはあまり意味のないことだった。いいパフォーマンスをしていなくても、選手が頑張っている姿を目にすれば、ついサポートしてしまう」
 
 ホイルは2008年にクラブを買収すると、すぐに当時の会長のやり方に我慢できなくなり、さらに金を出して全権を手に入れた。「『ディーン、あんたの肩書は何だ?』と聞かれたら、私はこう答える──『ファンの夢の管理人』」

 ハダースフィールドの大半のファンにとって、プレミアリーグ昇格は夢ですらなかった。まったく考えもしないレベルの話だった。プレミアリーグ昇格を「現実的に考えたことはなかった」と、ホイルも認める。

 しかし5月にウェンブリーで行なわれたレディングとの昇格プレーオフ決勝で、気がつけばハダースフィールドはプレミアリーグ昇格までPK1本というところまで来た。ディフェンダーのクリストファー・シンドラーが助走に入ったとき、ホイルはこんなチャンスは二度とないかもしれないと感じた。

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