酒井高徳が語るブンデス残留争い。名門キャプテンとしての重責と試練 (2ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko photo by Getty Images

 確かに序盤はいつもどおり苦しんでいた。すると11月のW杯予選後、マルクス・ギズドル監督は、いわばカンフル剤的に酒井を主将に抜擢した。しかも公式サイトなどで大々的に発表まで行なった。

 その効果は抜群だった。第11節、アウェーのホッフェンハイム戦でようやく今季3度目の勝ち点を獲得。その次の試合も引き分け。直後に2連勝。4戦負けなしだった。結果を出しながら、徐々に自分たちのスタイルを見出していった。堅守速攻。とはいえ洗練されているわけではなく、それぞれがハードワークをすることで泥臭く勝利をものにする。後半戦は、ライプツィヒ、フランクフルト、ヘルタ・ベルリン、ケルンといった上位勢にも勝利を収めている。

 第27節でドルトムントに敗れたが、続く第28節ではそのドルトムントと3位争いをするホッフェンハイムに勝ち切った。その時点で13位。チームは自らのスタイルがあるという大きな自信に加え、残留も見えてきた。しかし、そこからまさかの3連敗。酒井が口を閉ざすのも無理はなかった。

 週が明け、練習場をたずねてみると、酒井はいつもの様子だった。最後まで練習を行なうと、用具の片付けを手伝い、サポーターに気さくに対応をする。サポーターたちはドイツ語の発音で「ザカイ」ではなく、「カピテーン(キャプテン)」と話しかけていた。

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