2000年生まれのユベントスのFW、モイゼ・ケアンはアンリ級の黒豹か (2ページ目)

  • 井川洋一●文 text by Igawa Yoichi
  • photo by Getty Images

 投入されたのは84分と出場時間は短かったものの、自身の発言通り物怖じせずに溌剌(はつらつ)とプレーし、爆発的なスピードで左サイドの裏に抜けた際には、セリエAの守備の猛者たちを誘うようなふてぶてしい仕掛けも見せた。

「セリエAにデビューできて、とても嬉しい。でもこれは始まりにすぎない。僕は常に上を目指さなければならないんだ」

 ケアンにとって、さらに大きな舞台はその3日後にやってきた。国内リーグにデビューした時はすでにチームが3-0とリードした場面だったが、チャンピオンズリーグ・グループステージ第5節のセビージャ戦で同大会の芝生に初めて立った時、スコアは同点だった。

 この時も同じく84分に途中出場すると、すぐにレオナルド・ボヌッチが逆転ゴール奪い、ロスタイムにはマリオ・マンジュキッチがダメ押し点をマーク。チームは決勝トーナメント進出を決めた。ケアンの投入が逆転勝利に導いたとするのは、さすがに大げさかもしれないが、極めてフレッシュな若者がチームにポジティブな刺激を与えたのは間違いないだろう。マッシミリアーノ・アッレグリ監督は試合後に、「ボヌッチのゴールはボックス内でケアンが競り合いに勝ったことで生まれた」と話している。

 ただし、今回のデビューにはふたつの伏線がある。ひとつは、ゴンサロ・イグアイン、パウロ・ディバラ、マルコ・ピアツァといった前線の序列でケアンより上にいる選手たちが負傷離脱していたこと(イグアインはペスカーラ戦には出場)。そしてもうひとつは、代理人であるミーノ・ライオラの存在がケアンの背後にちらつくことだ。

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