イタリアの名将コンテ「勝利のマネジメント術」を自信満々に語る (2ページ目)

  • クリスティアーノ・ルイウ●取材・文 text by Cristiano Ruiu宮崎隆司●翻訳 translation by Miyazaki Takashi

 誰もがわかる通り、極めてシンプルな形だからこそ、タイミングさえ誤らなければ実に有効な手段になる。この攻めを有効に使えれば、敵は警戒せざるを得なくなり、簡単に全体を押し上げることができなくなる。となれば、中盤での攻防で優位に立つことができる。少なくともその確率は増す。

 長いパスを持ち味とするいわゆる"レジスタ"を中盤の中央に持っていないイタリア代表は、最終ラインでレジスタ役を担えるボヌッチに攻撃の起点となる役も委ねていた。私がユベントスの監督に就任したのは2011年5月。以降ずっと間近で見てきた選手だから、ボヌッチに何ができるかを私は知り抜いている。

 そして、今回のユーロでボヌッチはほぼ完璧に私の要求に応えてくれた。ディフェンダーとしてより、むしろ「ゲームのつくり手」として。最終ラインの中央から短くつなぐか、または長いボールを出すべきか、相手チームの意図や試合の流れを見きわめたうえで、ボヌッチは選択すべきプレーの判断を高い確率で間違わない。

――ベルギー戦のFWジャッケリーニのゴールを機に、大会前の低評価のすべてを覆しながらイタリア代表は加速。合宿初日(5月18日)のコベルチャーノ(イタリア代表合宿施設)に居合わせた記者たちは、私も含め、だれひとりとして今回の代表に期待していませんでした。

 したがって、最も基本的な部分をうかがいたい。合宿中ニ最終メンバーを23人に絞り込んだ当日(5月24日)、宿舎で監督は一体何を選手たちに語ったのか。マッティア・デ・シッリョ、あるいはダニエレ・デ・ロッシのふたりを例にとっても、ユーロにおける動きは数カ月前とは明らかに別人でした。

 実に残念なのは、昨シーズン中に短期の合宿を私は提案したんだが、結局いくつかのクラブの反対によってそれが実現できなかった。短い間とはいえ選手たちを私に預けてくれていれば、所属クラブでのパフォーマンスも格段に上がっていたはずだ。

2 / 4

厳選ピックアップ

このページのトップに戻る