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「敗北を運命づけられた国」ポルトガルがユーロで果たしたリベンジ (2ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 ポルトガルは、そのアイデンティティも不完全だった。アフリカとも中南米とも接点があり、ヨーロッパの端っこに位置しているが、どの大陸にもしっかり所属している感じがない。西ヨーロッパで最も貧しいポルトガルは、その存在自体に中途半端なところがあった。

 スポーツでもパッとしなかった。オリンピックで獲得した金メダルはこれまで4個にとどまり、今回のユーロまではフットボールの主要大会を制したこともなかった。

  ポルトガルはスポーツが大好きな国だから、とりわけこの点は大きな意味を持った。1933~74年にポルトガルを支配した独裁政権は、フットボールを通じ て国民に国への誇りを持たせようとしていた。今でもポルトガルのメディアでは、3つのスポーツ新聞が大きな役割を果たしている。フランスなどとは違って、 ポルトガルはフットボールなしでは生きられない国だ。

 やがて多くのポルトガル人が、自分たちの国は敗北を運命づけられていると思うようになった。外国による陰謀がそうさせているのだ、と。

  これまでポルトガルのフットボール史上最高の選手と呼ばれてきたエウゼビオは、1966年のワールドカップ準決勝でポルトガルがイングランドに敗れた理由 を、陰謀のためだと言いつづけた。大会運営当局はこの試合の会場を不当に変更したと、得点王にもなったエウゼビオは考えていた。当初は、ポルトガルがそれ まで2試合を戦ったリバプールのグディソン・パークで行なわれるはずだったのに、イングランドが全試合を戦っていたウェンブリー・スタジアムに変更になっ たというのだ。

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