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「敗北を運命づけられた国」ポルトガルがユーロで果たしたリベンジ

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】ユーロ王者ポルトガルの物語(前編)

喜びを爆発させるポルトガルの選手たち(photo by MUTSUFOTOGRAFIA)喜びを爆発させるポルトガルの選手たち(photo by MUTSUFOTOGRAFIA) スタッド・ドゥ・フランスに試合終了のホイッスルが響いたとき、別の夜の、別のスタジアムのことが思い出された。2004年、リスボンのエスタ ディオ・ダ・ルス。あの夜もユーロの決勝でホームチームが敗れ、観客はみんな押し黙ったまま家路についた。2004年の敗者はポルトガル。若いウインガー のクリスティアーノ・ロナウドはピッチで泣いた。

 どちらの決勝も退屈な試合で、唯一のゴールはいくつものチームを渡り歩いたストライカーが決めた。2004年大会を制したギリシャではアンゲロス・ハリステアス、2016年のポルトガルではエデルだった。

  パリにいたポルトガルの選手とファンは、2004年のことを嫌でも思い起こしただろう。だが、ポルトガルが初めて主要大会で勝ち取った今回のトロフィー は、2004年の敗北のリベンジではない。長年にわたってポルトガルが重ねた多くの敗北に対するリベンジだ。そして、この国の独特なフットボール文化がよ うやく勝ち得た勲章でもある。

 ポルトガルの作家ミゲル・ロウレンソ・ペレイラによれば、今までポルトガルのフットボールには、強い不完全 燃焼の感覚がつきまとっていた。彼は、ポルトガルが生んだ偉大な詩人フェルナンド・ペソアの「ポルトガルはまだ完成していない」という言葉を引用して、そ う唱えている。

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