トルコが16強進出に望み。複雑な3位争いで「裏カード」が白熱する (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki photo by Getty Images

 両国の総合力はほぼ互角。そう見える試合だった。テリム監督にはもっと危なく映っていたのだろうか、後半頭からトルコは布陣を変えた。前半、守備的MFを担当していたオザン・トゥファンを最終ラインに下げ、5バック(5−2−3)にしたのだ。これを3−4−3というには最終ラインに5人が並んでいる時間が多すぎた。

 得点を奪うことより、勝ち点3を守ることを優先した。そう捉えたくなる布陣変更だった。置かれた状況を考えれば、さらに攻撃的に臨むのが一般的だが、テリムはその逆をいった。自力突破ではなく、他の組の動向に賭けようとした。下手に打って出れば、勝ち点3さえ失う危険は確かにあった。

 そうした中でトルコにFKから追加点が生まれた。セルジュク・イナンのキックはユルマズを経て、メフメト・トパルの下に収まる。その戻しをトゥファンが蹴り込み、追加点とした。

 この瞬間、ほぼ決勝トーナメント進出が絶望となったチェコに対し、あと2点で当確になるトルコ。トルコサポーターは、喜びを全開にした。発煙筒をゴール裏席でバンバン炊き、それをピッチに投げ込む輩(やから)までいた。UEFAの指導などお構いなし。知らんぷりするように派手にやった。日本からやってきた能天気なライターに、それは喜ばしいビジュアルとして映った。さらなる爆発に期待を寄せたが、それでも、テリム監督はセーブした。賭けに出ようとしなかった。

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