果敢な守備アトレティコvs分厚い攻撃バイエルン。CL準決勝は最高の内容 (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki 中島大介●撮影 photo by Nakashima Daisuke

 バイエルンがこれほどポゼッションを生かした攻撃に長けているのは、DFラインの選手が自在に攻撃を組み立てることができるからだ。

 もしDFラインから中盤へのパスの出しどころがなかったときに、当たり前のように左サイドから右サイドへとボールを動かすだけなら、相手は次の展開を予想しやすく、すばやく横にスライドすることが可能だ。この試合で言えば、ボールがバイエルン右サイドバックのラームに渡ったときには、すでにアトレティコのプレスがかかって“詰んでいる”可能性が高い。

 しかし、バイエルンのビルドアップはそれほど単純ではなかった。例えば、左サイドバックのベルナトがボールを持つ。そのとき、右サイドバックのラームが中央に絞ってボランチの位置に入ってくる。すると、これをマークするアトレティコの左MFコケもピッチの内側に入ってくる。

 すると、右サイドには大きなスペースが空き、ここに右センターバックのハビ・マルティネスが進出してくる、といった具合だ。

 あたかもチェスや囲碁のごとく、理詰めで相手を動かし、その動きの逆を突いて次なる手を打つ。この試合では、こうしたせめぎ合いがピッチ上の各所で繰り広げられた。

 また、バイエルンは左センターバックのアラバが自らドリブルで持ち上がれることも大きかった。ボールを持ったままスルスルと前進し、クロスバーを直撃するミドルシュートを放ったのが象徴的だ。

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