あらゆる人種が集う街レスターが、サッカーでひとつになりつつある (5ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper  森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 レスターでは──少なくともこの町の基準からいえば──誰もがフットボールに夢中になっている。ザイディが3月半ばのニューカッスル戦のときに町を車で走っていたら、「通りはどこも静かだった」という。「みんな友だちの家に集まって、試合を見ていたようだった。とても不思議な雰囲気だった」

「私にとっては、自分がコーチとしてやってきた年月が、レスターが躍進した年月に重なってみえる。フットボールのコーチになんかなれるわけがないって、みんなに言われたから」と、ザイディは言う。「今は(コーチの)国際ライセンスを取るために勉強している。何と言われようと、私はやってみせる」。彼女の夢は、愛するアーセナルでアーセン・ベンゲルの後継者になることだ。

 クラブの躍進は、多様性に富む町の一体感を高めるのに役立っているようだ。若いイスラム教指導者のなかにも、クラブのユニフォームやスカーフを身に着ける人が出てきた。

 おまけに黒や茶色や白い顔をしたヒーローたちの活躍は、町のすべての人種グループに訴えかけるものがある。パキスタン系のリアズ・カーンは、金曜日にはたいてい町のモスクで、レスターのMFリヤド・マフレズの姿を見かけるという。

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