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世界が注目のレスター。地域のライバルからも無視された弱小の歴史 (4ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper   森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 記事の冒頭に登場したパキスタン系のリアズ・カーンも同じ思いだ。「正直言って、ここには文化的なアイデンティティーがない。『レスターを誇りに思う』というノリのものを見たことがない」。著名な作家のJ・B・プリーストリーは何十年も前に、レスターには「これといった特徴がない」と見抜いていた。

 こうしたアイデンティティーの希薄さが、非白人の移民が流入するうえでは役立ったと、ウィリアムズは考えている。レスターには確固とした文化があるわけではなかったので、彼らを拒まずにすんだというのだ。

 レスターに住むイスラム教徒で、「英国イスラムの新たな地平」という名のグループを運営するディルワル・フセインは、レスターの町が成功したのは、多くの人種集団をかかえる「多様性の究極の形」があるためだと考えている。レスターには一部の北部の都市と違い、アジア系を排除したがる白人層がいない。むしろ町のエリート層は、アジア系がどんどん上に立ってほしいとさえ思っていたという。

 レスターのコミュニティーには、アジア系の「柱」と呼べる人物がたくさんいる。たとえばローデシアからやって来たスレマン・ナグディは勲章も授与されており、いくつも持っている肩書のひとつはレスターシャー州の副知事だ。アジア系の祭りは、町のカレンダーにしっかり刻まれている。レスターで行なわれるヒンドゥー教とシーク教の新年の祭りは、インド国外では最も盛大だと言われる。

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