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世界が注目のレスター。地域のライバルからも無視された弱小の歴史 (5ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper   森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 レスターの人々が働く場は、みんな肌の色がさまざまだ。市当局は80年代に、アジア系を積極的に雇用する方針を打ち出した。町の中心にあるナーボロー・ロードに店を構える人の出身国は、ポーランドからアフガニスタンまで少なくとも22カ国に及ぶ。この通りは先ごろ、ロンドン大学の研究チームによってイギリスで最も「多文化なストリート」と認定された。

「レスターはすばらしいところだと思う。こんな町はほかにない」と、カーンは言う。「どんな肌の色をしていようと、いつでも仕事を見つけられる。周りに受け入れてもらっていないと感じることもない。だから、周りによけいな怒りを抱くこともない」

 明らかに人種をめぐる対立が起こることは、レスターではほとんどない。2011年にロンドン北部のトッテナムで黒人男性が警察官に射殺された事件をきっかけにイングランドの多くの都市で暴動が起きたときも、レスターでの騒動は取るに足らないもので、「ひと握りの人間が起こした、ささやかなものだった」と、カーンは言う。

 そうはいっても、レスターの町を歩くにつれ、この都市が見た目ほど多様性に富んでいるとは言えないこともわかってきた。働く場所やショッピング街やパブなどにいる人たちは、肌の色もさまざまかもしれない。けれども外出先で一緒にいる相手は、たいてい同じ人種だ。カーンは言う。「共存まではしていないのだろう。隣り合って暮らしているというところかな」。フセインも「うまくやっているという見方は、表面的なものかもしれない」と言う。

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