奇跡の優勝目前。レスター市民に聞いた「レスター快進撃の秘密」 (4ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper  森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 しかし合理的な要因だけでは、なかなか説明しきれない。地元っ子のなかには、監督のクラウディオ・ラニエリが64歳にして突然、天才になったと言う人もいる。イングランド王だったリチャード3世のおかげだという説もある。リチャード3世は1485年、レスターの近くで戦死した。2012年、レスター大学の考古学者が駐車場の地下で彼の遺骨を掘り当て、2015年3月には再埋葬の儀式が行なわれた。すると、そのころプレミアリーグ降格の危機にあったクラブが、なぜか突然、勝ち続けるようになった。

 レスターが初の王座に近づいている今も、町なかにトランペットが鳴り響いているわけではない。僕はこの町を2日間歩いて、クラブのユニフォームやスカーフを身に着けている人をほとんど見かけなかった。まだレスターは7年前と同じく、リーグワン(イングランドの3部リーグにあたる)にいると思っても不思議はなかった。

 僕が町でレスターのユニフォームを目撃したのは、市営スポーツセンターにある小さなピッチで行なわれていた5対5のゲームを見たときくらいかもしれない。地元の男性数十人が熱いけれど下手くそなゲームをしていて、その1割近くがレスターのユニフォームを着ていた。クラブが躍進したことで、フットボールをやる人は町に増えたのだろうか。「全然! 前と同じ」と、スポーツセンターの女性スタッフが言った。

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