EL16強のセビージャは、レアル、バルサより「スペインそのもの」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Reuters/AFLO

 では、フットボールをリードするスペインサッカーのイメージとは?

 美しさ、華やか、熱さ。そんなフレーズが出てくるかもしれない。それらはきっと、フラメンコ、闘牛、ラテン気質という、スペインのステレオタイプのイメージとも結びついている。確かに大きく外れてはいない。

 しかし、例えばバルセロナを中心とした地域に住むカタルーニャ人にとって、フラメンコという情熱と哀愁の踊りは異質な文化である。日本人が異国文化を楽しむのと同様で、生活文化には根付いていない。また、ラテン人気質というが、「底抜けに明るく、少しだらしがない」といういい加減なキャラクターは、勤勉で働き者のバスク人とは対照的である。そもそも、バスク人はラテン人ではない。

 スペインのイメージ。それを丸ごと請け負っているのが、実はセビージャなのである。

 スペインの南、アンダルシア地方にあるセビージャという町は、フラメンコと闘牛が人生に息づいている。国内では群を抜いて失業率が高く、従って犯罪も多く、どこか酔狂な町である。そんな町の人々が愛するフットボールは、当然、型にはまらない。即興性が高く、ショー的要素が強い。闘牛士に対して、噴き出した自分の血に興奮する牛をひらりとマントでかわし、一発で仕留める度胸が求められるのと同じ構造だ。

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