強いバルサの本質。3ゴールより凄みを感じたスアレス「鬼の追走」 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 ストライカーなら、胸トラップ&ボレーで鮮やかな2点目を決めれば、得点直後のみならず、相手のキックオフを迎えてもなお余韻に浸りがちだ。鼻持ちならない自己顕示欲をつい見せてしまうもの。スアレスも一見、そうしたタイプに見える。だが実際は、本能なのか、教育された結果なのか定かではないが、真逆だ。勤勉と言われる日本人ストライカーでも真似できない追走を披露。広州恒大はその結果、自軍深くからのスローインを余儀なくされた。

 バルサの特徴のひとつとして挙げられるのは、その高いボール支配率だ。この日の支配率は75%。相手がいくら格下とはいえ、ここまで高い数値を示すチームは他にいない。巧いから。パスコースが多くパスが繋がるから。......それだけでは75%には届かない。技術比べなら、最大でも65対35がせいぜいだ。それをさらに10%超えるバルサ。学ぶべき点は、ボールを奪還する速さだ。

 アッという間に奪ってしまうのは、相手が下手だからというより、バルサの奪取力が高いからだ。「パスサッカー」を表の魅力とすれば、こちらの魅力は裏。しかし、語られるのはいつも表ばかりだ。同様に裏と表があるスアレスの魅力もしかり。バルサは過去10年で4度、チャンピオンズリーグを制したクラブ。一時代を確立させたクラブに対し、表ばかりを再確認する、まさにうわべをなぞる考察を繰り返していては、時代から取り残される。

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