移籍市場の活用で競争力上げたチェルシー、下げたマンU (3ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper  森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 ミランは新たにタイ人実業家のビー・テチャウボンを共同オーナーに迎え、この夏の移籍市場ではバルセロナやレアル・マドリードよりも、そしてマンチェスター・シティを除くすべてのプレミアリーグのクラブよりも多額の投資を行なった。逆に億万長者のオーナーがいないアーセナルは、ファイナンシャル・フェアプレーの緩和前には持っていたと自負する移籍市場での競争力を失った。

3 ベンゲルは相変わらず移籍市場をうまく使えない

 アーセナルのアーセン・ベンゲル監督はストラスブール大学で経済学を学んでいるから、他のどのクラブの監督よりも金には詳しいだろう。おまけにベンゲルは、リーグでの成績を上げるには移籍市場で金を使うよりも選手の年俸を上げるほうが効果が高いという『サッカーノミクス』の基本原則も理解しているようだ(この原則が見いだされた大きな理由は、移籍してきた多くの選手が活躍できないためだ)。

 しかし、ベンゲルがもっと移籍市場で金を使えばアーセナルの成績は上がる(そして経営が危なくなることもない)というファンの言い分は正しい。アーセナルは2月の収支報告書で、1億3880万ポンド(約257億円)をキャッシュで持っていると発表した。ヨーロッパのクラブでは最高額だが、アーセナルはこの夏の移籍市場でフィールドプレーヤーを買わなかったヨーロッパで唯一のビッグクラブだった。ベンゲルはチームづくりのための決断を早めるべきだろう。

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