移籍市場の活用で競争力上げたチェルシー、下げたマンU
【サイモン・クーパーのフットボールオンライン】移籍市場9の真実(前編)
スポーツ経済学者のステファン・シマンスキーと僕は、共著『サッカーノミクス』(邦訳『「ジャパン」はなぜ負けるのか~経済学が解明するサッカーの不条理』NHK出版)の中で、移籍市場を賢く使う方法と、金をドブに捨てるような愚かな使い方を分析した。この夏の動きからも、僕たちがたどり着いた「移籍市場の真実」が確認できる。いくつか例を見てみると──。
1 移籍金の高騰は、まったく理にかなっている
選手の移籍金が5000万ポンド(約93億円)を超えると、「狂気のさた」だとか「節度がない」などと言われる。今のフットボール界にはバブルが生まれていると、多くの人が言う。でも、それは違う。むしろビッグクラブは、ようやく自分たちが出せる金額を出すようになったのだ。
10代では史上最高額の移籍金でマンUに加入したフランス代表マルシャル photo by Getty Images 確かに移籍金は高騰している。国際監査法人のデロイトによれば、イングランド・プレミアリーグのクラブがこの夏の移籍市場に投じた金は総額で8億7000万ポンド(約1610億円)と、史上最高額にのぼった。
だが、クラブの売り上げはもっと大幅に増えている。2013~14シーズンには、プレミアリーグの全クラブが売り上げ増を記録した。最大の要因はテレビ放映権料の高騰だ。デロイトによるとプレミアリーグ全体では昨季、1998~99シーズン以来初めて、税引き前利益を出している。
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