2015.06.02

渦中のブラッターFIFA会長はなぜ再選されたのか

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】FIFAに何が起きているのか(前編)

 ホテルのコンシェルジュ(ドイツ語では「ポルティエ」)には、明らかにスイス人のイメージがある。スイス人を体現したような存在だと言う人もいる。ポルティエはにこやかで、いくつもの言葉を話し、とくに自分の考えを強く持っているわけではない。だが、客の名前はしっかり覚える。

 もちろんポルティエは、どの客が金を持っているかも知っている。19世紀にはイギリス人、それからアメリカ人、次はロシア人で、今は湾岸諸国のアラブ人だ。

 スイスの観光地バレー州で生まれたゼップ・ブラッターは、まさに生まれついてのポルティエだ。だから彼は、FIFA(国際サッカー連盟)の幹部ら9人とマーケティング会社関係者5人が贈収賄などの容疑で起訴された直後にも、FIFA会長選で5選を果たすことができた。

FIFA総会で再選されたブラッター会長(AP/AFLO) ブラッターの17年に及ぶ在任期間の中で、欧米諸国の彼に対する反発は今、最も強まっている。ワールドカップのボイコットやFIFAからの脱退をほのめかす国も少なくない。

 だが実際には、どれも現実のものにはなりそうにない。僕たちはブラッターを批判するだけでなく、彼の才能を認めなくてはならない。79歳のブラッターは、欧米人がそれほど力を持たない新しい世界秩序があることを、ずっと以前から理解していた。FIFAの幹部ら14人を起訴したアメリカ司法当局にも、彼を引きずり下ろす力はないかもしれない。