2015.06.02

逮捕者が出ても、FIFAとブラッターは変わらない

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper  森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】FIFAに何が起きているのか(後編)

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 2010年に行なわれた、18年と22年のワールドカップ開催国の決定投票以降、欧米諸国は「FIFAは腐敗している」と言いつづけてきた()。しかし欧米以外の国はこうした批判を、敗者の偽善的な負け惜しみとみなした(これには一理ある)。カタールのために仕事をしたフランス人のコミュニケーション・コンサルタント、リシャール・アティアスは僕に言った。「ワールドカップの開催国が選ばれる過程に関心を寄せるのは、特定の価値観を持つ一部の人々だけ。その価値観とは実にイギリス的なものだ」

※2018年はロシア、2022年はカタールで開催されることが決まった。

ブラッターFIFA会長(左)と、対立を深めるUEFAのプラティニ会長(Getty Images) このとき2大会の開催国を選んだFIFAの決定は、カタールとロシアが地政学的にのし上がることを予見していた。2010年のこの決定から15日後、チュニジアで露天商が焼身自殺したことをきっかけに、北アフリカの国々で後に「アラブの春」と呼ばれることになる民主化運動が連鎖的に始まった。

 米ライス大学ベイカー・インスティテュートの中東専門家クリスティアン・コーツ・ウルリヒセンによれば、カタールが「ワールドカップの開催権を手にし、世界で認知を得たという空気が高まった」ことが「アラブの春」の広がりに影響したという。

 カタールは北アフリカのイスラム教徒を経済的に支援し、リビアのカダフィ大佐を最高指導者の座から引きずり下ろす力にもなった。昨年には、ロシアのむき出しの権力が欧米諸国を再び驚かせた。プーチンがクリミア半島を併合したのだ。