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最優秀選手賞受賞も、メッシの時代は終わったのか (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • Photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

試合後、メッシはゴールデンボール賞(大会最優秀選手賞)を受けている。しかしこれは彼の契約スパイクメーカーが冠になっているため、額面通りには受け取れない。メッシ自身、この賞を受け取るときには悔しさを押し殺すようで、表情には怒気すら含まれていた。

 メッシはマラドーナを超えたのか?

 それは答えのでないテーマなのだろうが、メッシはマラドーナが人々に与えた神々しさとヒロイズムの記憶を超えることはできていない。

 90年イタリアW杯、マラドーナはほとんど一人で母国アルゼンチンを決勝まで引っ張っている。

 当時、アルゼンチンには86年メキシコW杯王者の面影はなかった。マラドーナも故障に苛(さいな)まれ、4年前の冴えはなかったが、準々決勝では王国ブラジル、準決勝では開催国のイタリアを奈落の底に突き落とした。王であることをかなぐり捨て、何度倒されても敢然とボールを追った。その牽引力は凄みを感じさせ、存在感は巨大だった。神がかったPK戦で勝ち上がる姿は、ピッチに“神様”が降り立ったように見えた。

 最強の呼び声が高かった西ドイツを相手にした決勝戦、神様は力尽きていた。しかし悲嘆に暮れる様子さえ、どこか絵になった。

 メッシは27歳になったばかりだ。ロシアW杯で世界の頂点になることも可能だろう。ただ、そのプレイにはどこかで狂いが生じた。そのズレに最も苛立っているのは、本人のはずだ。

「ピッチでの自分がすべてを語っている」

 かつてメッシが言っていたように、それが彼の生き方のはずである。

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