ブラジルW杯決勝が名勝負になった要因は?

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 どんな大会であっても、決勝戦というのは得てして退屈な試合になりがちだ。互いのチームが優勝を意識しすぎるあまり慎重な戦いを選択し、さしたる見せ場もないまま時間ばかりが進んでいく。そんな試合が少なくない。

 ましてワールドカップ決勝ともなれば、慎重さはさらに増す。4年に一度しか巡ってこない世界最高の舞台で、しかもタイトルに手が届くところまで来ているとなれば、選手が積極性や大胆さを失ったとしても無理はない。

 だが、この試合は違った。

 決勝に進出した両チームがそれぞれの特徴を出して攻め合い、チャンスを作った。ゴールシーンこそ、延長戦を含めた120分間でわずかに一度だけしか訪れなかったが、際どい場面はどちらのゴール前でも多かった。

 これほどおもしろいワールドカップの決勝を見るのは久しぶりのことだ。

 ワールドカップ・ブラジル大会は7月13日、リオデジャネイロのマラカナン・スタジアムで決勝が行なわれ、延長戦の末、ドイツがアルゼンチンに1-0で勝利。通算4度目の優勝を果たした。

ブラジルW杯決勝は、延長後半にゲッツェのゴールが決まり、ドイツがアルゼンチンに勝利したブラジルW杯決勝は、延長後半にゲッツェのゴールが決まり、ドイツがアルゼンチンに勝利した 勝利したのはドイツである。だが、この試合をおもしろいものにした功労者として、まず名前を挙げなければならないのは、アルゼンチンのエース、FWメッシだろう。

 今大会のメッシはいくつも決定的な仕事をしていたものの、その働きはかなり限定的だった。1試合90分、あるいは120分を通じてほとんど動かず、試合に参加しているのはわずかな時間だけ。それで決定的な仕事をしてしまうのだから大したものだとも言えるが、準決勝のオランダ戦のように、何もせずに終わってしまう危険性もかなりの確率で秘めていた。

 ところが、この決勝だけはまるで別人の動きだった。

 試合開始からわずか9分、急加速のドリブルでドイツのDFフンメルスを振り切ったのをはじめ、前半から次々にチャンスを作り出した。

 メッシが見せた全力疾走の回数は、決勝の1試合だけで残り6試合の合計を超えるのではないかと思うほど、メッシはボールを受けると果敢にドリブルで勝負を仕掛けた。

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