負傷したネイマールにスニガが謝罪しない理由

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by JMPA

小宮良之のブラジル蹴球紀行(15)

 サルバドールのホテルに数日間宿泊していたとき、ルームカードキーがしばしばエラーを起こし、そのたびにフロントに戻り、直してもらった。フロントのお姉さんは、当然のことのようにこれを処理した。

「あら、また来たの?」

 そう言わんばかり。システムを改善しようという意志も、"悪いわね"と申し訳なさそうな感じもさらさらない。"直してあげたわよ、坊や"的に余裕の笑顔すら浮かべる。翌日にはまたエラーを起こすのだが、だからといってイライラしては完全な負けである。いや、勝ち負けではないかもしれないが、きっと損をするだろう。こっちも余裕の笑顔で対応するしかない。

コロンビア戦で負傷、戦線を離脱したネイマール(ブラジル)コロンビア戦で負傷、戦線を離脱したネイマール(ブラジル) 道徳文化の差。そう書くと大げさだが、やはり横たわる違いを理解しなければならない。自分の生きてきた道徳や習慣だけで、相手や物事を判断しようとすると、そこにはまさにエラーが生じてしまう。

 準々決勝のブラジル対コロンビア戦。ネイマールに後ろから派手な膝蹴りを食らわせたスニガは謝罪の言葉を述べていない。

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